MDMAによる死亡事故|リア・ベッツさんの悲劇

明けまして、おめでとうございます。今年も、日本の薬物問題についていろいろな角度から考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
2010年、私の仕事始めは、MDMAの話題とともに始まりました。勾留中の元芸能人が、保護責任者遺棄致死で再逮捕されたそうです。

この年末年始の間に、私は手元の古い文献のMDMA関連の記事をなんとなく読んでいました。ヨーロッパの若者の間に、当時は法規制の対象外であったMDMA(エクスタシー)がダンス時のドラッグとして広まったのが1980年代。やがて、このドラッグを服用してダンスに興じていた若者が急死するという事故が相次ぎ、時には死に直結することもあるエクスタシーの危険性が伝えられ、またダンスの場面での事故を防ぐための安全情報が提供されるようになりました。

その象徴として語り伝えられるのが、18歳を迎えたばかりの英国の高校生リア・ベッツさんの死亡事故(1995年11月)です。2002年3月1日のBBCニュースには、若者の薬物乱用防止教育のために、死の床にある愛娘の写真を公開しているベッツさんの両親に関する記事があります。父親のベッツ氏は「若者のほとんどは、薬物の一面しか知らずに、薬物は面白い、別にたいしたものじゃないと思っている。私は薬物を両面から語るのだ。」と語ります。両親は、娘の悲劇を繰り返さないよう、英国中の学校を回って講演していると伝えられています。(この記事は2002年に起きた、ヘロインの過量摂取による若い女性の死亡事故に関連してベッツ夫妻の活動に触れたものです。)
Leah Betts' parents back heroin photos|BBC News 1 March, 2002
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/education/1848638.stm

ところが、同じBBCニュースの2005年11月の記事「リアの悲劇が残したものThe legacy of tragic Leah」では、論調が少し変化してきます。リアの死から10年、ベッツ夫妻はその後も娘の死の真実を伝えるために学校を回っていますが、果たしてこうしたキャンペーンはどれだけの成果を生んだのだろうかと、記事は疑問を投げかけています。
さらに、リアさんが死に至った原因は、MDMAの直接的な作用によるものではなく、MDMA摂取とダンスで高体温になった彼女が、急激に多量の水を飲んだことによる急性低カリウム血症(記事では「水中毒」と記載されています)によって、体内組織のカリウムのバランスが急激に失われ、昏睡に陥り、死に至ったと説明されています。
「MDMA(エクスタシー)を服用してダンスをするなら、水分補給を忘れずに」若者たちへの安全情報として、こんなメッセージが伝えられていますが、水を飲みすぎてもまた、新たな死の危険があるかもしれない・・・。この当時の英米ではこんな話題が取りざたされていたことを思い出します。
The legacy of tragic Leah |BBC News 16 November 2005
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/4440438.stm

薬物摂取による死亡事故は単純そうで複雑なものです。MDMAの場合は、死に至る筋書きとして代表的なものが、MDMAの交感神経刺激作用にダンスなどの激しい運動が加わって、熱中症に似た状態に陥り、極度の高体温によって横紋筋融解、腎不全および凝固異常などが起きて死に至るというもの。MDMAのもたらす高揚感が、疲れや不快感を忘れさせ、脱水状態になっても気づかすに踊り続けることで、重度な症状になることが多いといわれます。他の薬物やアルコールとの併用によって危険度が増します。
若者の死亡事故が続発し、脱水状態を予防するために水分をとりながら踊るよう推奨されていたのですが、リアさんの死の真相が伝えられたころから、「適度の水分補給」が強調されるようになりました。
薬物は危険です。でも、その「危険」の内容を具体的に伝えずにいることは、危険をさらに拡大してしまうかもしれません。MDMAによる死亡事故が再び話題になるなかで、私は英国の古い新聞記事を読み直しています。
なお、高体温によって死に至るメカニズムについては、熱中症に関する医学的な記載を参照するとよくわかります。たとえば、メルクマニュアル18版日本語版「熱中症」http://merckmanual.jp/mmpej/sec21/ch318/ch318d.html
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コメント (3)
死の危険、死の危険・・・・・
登山も川遊びも指定危険娯楽とかいう法律でも作ったら?
自動車会社は凶器を作り続けてるし。
死ぬのが怖かったら車には乗れないよ。
安全な大麻が禁止されてるから、仕方がないから脱法モノで遊ぶしかない。
この国の欺瞞なんかとっくに見破られているよ。
アルコールだって無茶な飲み方をするから死ぬわけで、分別のある人間は適度に楽しむ。
ようはアルコール自体が悪いわけではなくて、飲む人に問題があるんだよ。
この国に必要なのは、薬物規制や懲役ではなくて、人間教育なんだ。

シンジケート
うろ覚えですが、同じくイギリスのクラブで起こったMDMAによる死亡の一例を私も知っています。MDMAなどのチャンポンで若い青年が泡を吹いて倒れ、オーディエンスは大勢いたのに誰も病院に通報できず(もちろん逮捕が怖かったからです)結局彼はなくなってしまったそうです。
死亡した彼のご両親はメディアに向けてMDMAやドラッグの根絶を訴えましたが、とあるニューエイジ系の代表者はご両親に丁寧な手紙を書いたそうです。
「捕まるのが怖いから誰も救急車をよべなかったのです。もし法律が人命最優先で考えられているのなら、このような悲しい事故は起きなかったはずです。」

押尾さんの事件をニュースで知った時、十数年前に知ったこの事件を思い出しました。まったく同じじゃないかと!!
いつか野外パーティーで女の子が車中でMDMAの影響で亡くなった状態で発見されたことも覚えています。

しかしイギリスでは「違法なドラッグはもちろんダメだけど取り締まりよりも安全な取り扱い方法を教育して命は守ろう」という風潮になりましたよね。
なぜ日本では「まずは依存症や薬物事故死を防ぐ具体的対策」が語られずダラダラと同じような悲劇を繰り返しているのでしょうか?
昨年末に覚せい剤の再犯率の高さが話題になってましたが、どのコメンテーターも「それだけ覚せい剤は恐ろしいということです。絶対に近づいてはいけません」しか言えません。薬物対策が不備だらけだから再犯率が高いんだろうと、なぜ誰も言えないんでしょうか?
主婦の私がご近所でそんなことを言えば変人扱いです。(意見を聞かれたら薬物対策の在り方がおかしいと答えてますけど)

逮捕者は警察や厚労省にとったらお客さんだから、減っては困る、再犯大歓迎ということでしょうかねぇ?と勘ぐってしまうほど突っ込みどころ満載の低レベルな薬物対策です。
司法改革
尾崎豊も逮捕が怖くて救急車が呼べなかったのですよ。

シンジケート

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