“相手の人格・自由”を否定する言動の繰り返しによる間接的なマインドコントロールと学習性無力感

優しくて相手に対する配慮の強い人(強く自己主張ができない人)が、『この人には逆らうことができない・自分はこの相手に恩義があるので言うことを聞かないといけない(相手は自分の為を思ってそういう態度を取っているだけなのだ)』といった無意識的な上下関係や立場の違いを認識してしまった時に、マインドコントロールにも似たモラルハラスメントの従属関係ができあがってしまうのです。

結婚したり妊娠出産したりすると、『子ども・生活費・世間体・両親への遠慮などの要因』によって簡単には別れられなくなる人が大半なので、無意識的であるにせよ加害者は間接的なマインドコントロールによって、相手を自分よりも下の立場(=いつも自分を気遣わなければならない立場)に置こうとします。

その相手の自由や主張、選択肢を奪い取って、自分に従わせることで自尊心・自律的判断を弱めようとするあらゆる言動の繰り返しが、モラルハラスメントになるのですが、多くのケースでは加害者の立場であっても『相手を傷つけている・苦しめているという自覚』はなく、『他の人ならできるはずの当たり前の常識・世間で正しいとされている価値観・自分のほうが苦しんでいるということ』を相手になんとか伝えようとしているという感覚になるようです。

『夫婦・家族なのだからこれくらいのことはしてくれて当たり前,それができていないお前は間違っていて問題がある,愛情や心配があるからこそ敢えてこういった不快な態度や発言で注意している』といった思いやりに欠ける言動・態度がモラハラの被害となります。モラハラにおける解決困難な問題は、『自分がしたいことを相手がして欲しいことだと思い込む心理機制(自分がしたいことをしているだけなのに、相手のためにそれをして上げているという感覚を持つこと)』にあります。

モラハラを受けている人が、きちんと言葉に出して『〜をして欲しい,〜をしないようにして欲しい,しばらくそっとしておいて休ませて欲しい』といった切実なメッセージを伝えても、そのことにはほとんど関心を示さず実行してくれないケースが多く、次第に被害者は加害者に何かを頼んだり訴えたりしても無駄という『無力感・意欲減退・自己効力感の喪失』に陥ってしまうのです。

閉鎖的関係における精神的な暴力や虐待、嫌がらせであるモラルハラスメントは、目で見たり客観的証拠を示したりすることが難しく、特に周囲(他人)にはその被害の苦しみやつらさが伝わりにくいものです。

モラハラを継続的に受けると、ストレス反応性の自律神経失調症や身体表現化障害(転換性障害)、うつ病、適応障害はかなりの頻度で発症するのですが、それらの原因が相手のモラハラの言動であると立証することは容易なことではないでしょう。

心と心の交流における共感・優しさはなくても、『表面的なお見舞い・励ましの言葉・身の回りの手伝い(行動次元の手伝い)』などはすることが多いので、周囲からは良い夫・妻・恋人として認識されることも少なくなく、ずっと体調・精神状態が悪いままであれば、その被害者の自己責任(あんなに相手は良くしてくれているのに)という風に思われてしまいやすいからです。

被害者であっても『このくらいの事で落ち込む自分が弱いだけだ・自分が少し我慢していれば相手は機嫌が良いのだから・精神が弱ってしまって何もできない自分には価値がない』といった考え方に囚われてしまいやすい、そういった自己否定の考え方を持つように加害者から仕向けられるということもあります。長期間にわたって自分で自分の行動・発言を決断できない『緩やかなマインドコントロールの状態(自分の感情を殺して相手を怒らせないように配慮する癖が染み付いた状態)』にはめ込まれてしまう危険もあります。

モラルハラスメントとされる相手の気持ちを不安にさせたり緊張させたりする『行動・発言・態度・反応』の一つ一つは、確かに取るに足らないもの(心身が健康であればそれなりに受け流したり我慢できるもの)も多いのです。しかし、それが毎日のようにチクチクと繰り返されたり、自分の価値を貶められたりすることで、次第に自分に自信が持てなくなり、物事に対する興味関心が衰えていきます。相手とのコミュニケーションで落胆(虚しさ)や苦悩を何度も味わわせられることで、自分の喜怒哀楽の感情が麻痺してしまい、抑うつ的で無気力なうつ病に近い状態にもなりやすくなるのです。

こういった自分の価値や能力を相手から繰り返して否定されることによって、『自分は何をやっても人並みにできない劣った人間である・努力して頑張ってもどうせ認められることがないしバカにされるんだ・何かをやってみてもすぐに嫌味や皮肉を言われて否定されるだけだ』という“学習性無力感(learned helplessness)”が形成されます。

その学習性無力感と自信の衰えが、『抑うつ状態・アパシー状態』を引き寄せてしまうという心理メカニズムがありますが、こういった間接的なマインドコントロール(言語的・非言語的な暗示)の弊害を回避して改善していくためには、『自分自身の意志・意欲・目標』を段階的に取り戻していき、相手の理不尽な揶揄や皮肉に対してはっきりと拒絶して『不快になってやる気もなくなるので、そういったことは二度と言わないで欲しい(自分を下に置いてからかうような指示的・揶揄的な言動をこれからやめてもらえないと一緒に付き合うことはできない)』という自己主張ができるようになる必要があるでしょう。

この記事は、前回の記事の続きの内容になっています。






■書籍紹介

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