第665回 フットストライクは傷害率に影響しない:U.S.Army大研究




膝を痛めたランナーが裸足で50マイルレースを完走するという内容の著書「Born to Run」がフォアフット論争の火付け役になり、ベアフット/ミニマリストの提唱者は、フットストライクと傷害には相関性があり、フォアフット及びミッドフットは、かかと着地に比べて傷害が少ないと主張します。
一般市民ランナーの大半はかかと着地ですが男女別のデータは限られており、而も、かかと着地とミッドフットの傷害の違いについての大規模の研究はありません。その理由は、ランニング傷害の実験に応じてくれる被験者が数少ないからです。
兵士のトレーニング傷害は米国陸軍にとっても重要課題であり、上官の鶴の一声で大掛かりな実験が執り行われました。研究の概要は次の通りで、5月30日のAmerican College of Sports Medicineの年次総会で発表される予定になっています。

U.S.Army Research Institute of Environmental Medicine
Footstrike Patterns do not Influence Running Related Overuse Injuries in U.S. Army Soldiers

目的:
兵士の走法の特徴および男女間の違いを調べ、男女兵士における走法と傷害の関係を決定する。

方法:
5つの軍事基地の兵士1027人(26.1±6歳)を被験者とした。一般的なトレーニングペースで指定レーンを走らせ、トレーニング習慣と傷害発生率(retrospective)についての調査を行った。因みに、Outcome が発生してから調査するものをretrospectiveと言う
二人の臨床専門家が急性またはオーバーユースによる過去1年間の筋骨格傷害レポートを仕分けた。高精細ビデオカメラを用いて矢状面で複数のフットストライクを記録した。 フットストライク、性別、酷使による傷害の関係はカイ二乗検定を用いて分析した。

結果:
兵士の大半はかかと着地だった:
・かかと着地83%
・ミッドフット17%

性差によるフットストライクの有意差は認めらなかった:
女性232名
・かかと着地85%
・ミッドフット15%
男性795名
・かかと着地82%
・ミッドフット18%
いずれもP=0.30

過去一年間の少なくとも一つのオーバーユース傷害報告には有意差が認められなかった:
・かかと着地15%
・ミッドフット18%
p=0.58

オーバーユース傷害は男性よりも女性でより多く報告されたが(27%:14% P≤.0001)、フットストライクとの関連性は認められなかった。

全兵士のパフォーマンスについても調べた:
男性は2マイル(約3.2km)を14分40秒、女性は17分15秒で走った。
かかと着地は男性では12秒、女性では約35秒遅かった。

結論:
この大規模コホートでは走法による傷害に有意差がないことが示された。

アップデート(2014年6月1日)



Runner's World
May 29, 2014
Settlement Site for Vibram Class Action Suit Opens

米国Vibram社は、5本フィンガーシューズの健康効果として足の傷害や筋肉強化など誇大広告をした理由で集団訴訟を受けていました。
2009年3月21日〜2014年5月27日に対象商品を購入した全員に、総額375万ドル(約3億8100万円)をescrow account(エスクロ方式)で支払うことを提案し、併せて今後は広告の中で健康効果をうたうことを止めると発表していましたが、今般1足最大$94の返金手続きのサイトがオープンされました。同様の和解事例を見ると$20〜$50の受取りになりそうとのことです。申し立ての締め切りは2014年9月24日です。


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