続報・強制不妊手術 自治体は実態解明と被害者復権を急げ



;昨年の総合県交渉の宿題 誠意もって答えてほしい

私たちは昨年8月31日、埼玉障害者市民ネットワークと埼玉県との総合県交渉2日目で、強制不妊手術の問題をとりあげた。その時のことを最近(2月15日)のfacebookに書いたので、以下に再掲しておく。

 「私たちは、昨夏埼玉障害者市民ネットワーク(野島久美子代表)による総合県交渉の要望書でこの問題をとりあげたが、県健康長寿課・母子保健担当の回答は以下の通りだった。

 『台帳は保存期間を過ぎていて残っていなかった。母体保護法統計はネットでは簡単に見られるが、平成8年以前の優生保護法統計については、厚労省の方に台帳がすべてない。厚労省に聞いたところ、直近5年間位だけだったら教えていただけるということだった。平成4年から平成8年までの5年間に、埼玉では医師の申請による不妊手術はなかった。それ以前の件数について台帳を調べることができるので、必要であれば私が行って調べることは可能。』

 そして調べてもらった結果、昭和29年から逐年の不妊手術件数の表が届いた。これによれば、強制不妊手術の件数は387人となる。

 ところが、総合県交渉で「保存期間をすぎていて残っていなかった。」とされた台帳が358人分は残っていたという!交渉での回答はまちがいだった。

 あの時の担当者が新出生前診断が早期選別の役割を果たしている問題について、「今回初めて知り、一人の母親として考えさせられた、これから調べていきたい。」と述べた率直な態度を思い出すにつけ、決して隠蔽工作などありえないと思う。誰の責任というよりも、県総体として、障害者はあってはならないと手を下してきた事実に無自覚でここまで来たことだけは確かだ。

 折しも県障害者支援計画、高齢者支援計画、地域福祉支援計画のパブコメが始まっているが、こんなことを棚あげにしたままの「地域共生社会」、『我が事丸ごと』ってなんだろう?!」


見えてきた被害の深さ 自治体は真摯に向き合って



 上が「不妊手術2700人確認」とした埼玉新聞1月26日の記事。この時点では、資料が残っているのは19道県とされていた。調査は共同通信が行った。そのうち「埼玉358人」とある。昨年総合県交渉の後に県から知らされた「387人」という数字は、厚労省の統計上の数字でしかない。それに対して、この「358人」という数字は、その人たちが強制不妊手術を受けた過程の具体的な資料が県に残っている人数である。

 


 共同通信その他の調査は継続して行われている。情報公開を迫られた自治体はあちこちを洗い直し、徐々に発見される資料の数が増えている。上は2月22日の埼玉新聞で、資料が残っていた自治体がこの1ケ月足らずの間に4府県加わり、23道府県となった。この時点で、総数は3402人分となった。

 このときの調査では、新たに23道府県に対し、記載があった最年少と最年長の年齢を質問したという。回答があった中で、最年少は判明済みの宮城県の「9歳」。他に北海道と千葉が「11歳」。山形県、神奈川県、岐阜県、京都府が「12歳」。福島県、三重県と奈良県、広島県が「14歳」。埼玉県が「15歳」としたという。

 厚生省の53年の通知で、本人同意も親族らの同意もない強制手術に「産児の可能性があるとき」との条件を付けており、妊娠の可能性がない子どもが対象となっていた疑いが浮上した。立命館大生存学研究センターの利光恵子客員研究員は、「通知から逸脱していた可能性があり、広く行われていたとすれば驚きだ。強制手術がいかに正当化されないものかが今更ながら分かる。女児の場合は開腹手術が必要で体への負担が非常に大きい。著しい差別、偏見に基づいて行われたのではないか」としていると報ぜられた。

上の写真は、宮城県でかって強制不妊手術を行った愛宕診療所の跡地。

 毎日新聞は、旧優生保護法(1948〜96年)下で不妊手術を強制された障害者らの個人名や手術理由を記した資料の保存状況を調べるため、全47都道府県を対象にアンケートと聞き取り調査を行った。その結果は以下。

 資料が確認されたのは25道府県の計3596人(3日現在)分で、旧厚生省などの統計で強制手術を受けたとされる1万6475人の22%にとどまった。このうち全員分が残っていると推定されるのは千葉、和歌山、奈良、鳥取、長崎の5県。東京や大阪など残る22都府県は「現存しない」と回答した。(毎日新聞:3月4日)




 3月6日の読売新聞によれば、同社の全国調査の結果、3月5日現在で、25道府県 3601人の資料が残存することがわかったという(上の表)。うち埼玉県は、373人。



 個人資料が残存しない22都府県にも、強制不妊手術に関するその他の資料は残存する可能性がある。

 3月5日の朝日新聞(上)によれば、旧厚生省の統計資料によると、強制不妊手術は都内で483人とされているが、都が旧都衛生局の保管資料を調べた結果、510人が確認されたという。うち10代が55人いるという。

 同様に、旧厚生省の統計資料によると、強制不妊手術が386人とされているが、個人資料が残存しないとされる長野県では、県衛生年報の記載から474人あったことが判明。1950年から79年にかけて実施され、最も多い54年には58人に達していた。未成年者への手術も58人あった(信濃毎日新聞:2月22日)。

 やはり個人を特定する資料は残っていないとされている熊本県は、旧厚生省の統計資料では強制不妊手術が204人とされているが、県の資料によると246人に上るという(RKK熊本放送:3月6日)。

地元埼玉県そしてすべての都道府県へ 実態解明と被害者の復権を急げ

 それにしても埼玉県のホームページを何度検索しても、「強制不妊手術」で唯一ヒットするのは、一昨年3月に、With You さいたま 埼玉県男女共同参画推進センターが開催した県民講座「障害と女性」 -だけだという現状をどう考えるべきか。

 埼玉県と同じように、新聞各社の情報公開請求にほぼ全面黒塗りで応じた三重県が、この対応を見直し、個人が特定される部分を除き、できる限り開示する方針に転換したことを見習う必要があろう。以下、毎日新聞:3月9日。
 
三重県、黒塗り開示へ 個人特定部分除き 

「旧優生保護法に基づく障害者らへの強制不妊手術に関する情報公開を巡り、三重県の鈴木英敬知事は9日、公文書の多くの項目を黒塗りにして開示した県の対応を見直し、改めて開示する考えを明らかにした。大半を黒塗り開示した北海道や埼玉県の対応にも影響を与える可能性がある。

 鈴木知事は取材に『県がやれることは丁寧にやろうという方針だったので、まだ開示できる部分があるはずだということに至った』と話した。」

 鳥取県は、新日本海新聞社の情報開示請求に対し、手術申請の適否を判断する優生保護審査会の議事録を公開した。以下、新日本海新聞:3月10日より。

 「本人同意のない不妊手術の実施は、精神疾患の遺伝を防止する『公益上の必要性』と規定する旧優生保護法第4条をめぐる議論では、委員の一人が『バカは産んでもらったら困るということが公益になるわけですか』と発言。女性に精神疾患の親族がいたことを巡っては、別の委員が『精神病というものは遺伝性が多いという原則論に基づいて、1人でもあったら、それとの関連性があったことにしないと、あまり厳密な考えをしない方がいいと思う』と、追加調査に否定的と受け取れる発言をしていた。
 
 このほか、複数の委員が『自分の子どもを産んでも育てられないでせう、この人自身はそういうことですね』 『子どもが最も不幸になる』などと指摘。全員が『異議なし』とし、申請を認めた。

 審査会の結果を受けた県は12月2日付で決定通知書を出した。手術について県は『行われただろう』としている。」

 市野川容孝氏が1997年に福祉先進国スウェーデンの強制不妊手術の歴史とその実態解明、被害者への補償等の視察を踏まえ、日本での優生手術に関し、厚生省への陳情や被害者へのホットラインを行った後、「世界」1999年5月号に書いている(福祉国家の優生学ースウェーデンの強制不妊手術と日本ー)

 「例えば、施設で暮らしている女性の知的障害者が男性の入所者といちゃついているところを職員に見つかり、施設側は管理しきれないということで、本人には『お腹の病気の手術』と偽って、この女性の子宮を全摘させる。彼女はその後、身体の不調を訴えるようになった。

 これはすでに優生保護法そのものに違反した処置である。なぜなら、この法律が定めていた『優生手術』は『生殖腺を除去することなしに』おこなわれるものに限られており(第2条)、不妊化の方法として子宮摘出など認めていなかったからである。

 あるいは、生活保護を受けていたある家庭の女の子は、多分にそのことが理由で『精神薄弱者』として養護学校に入れられ、そして何もわからないうちに不妊手術を受けさせられた。

 あるいは、らいの療養所では、園内の結婚を認めてもらうために、多くの患者たちが不妊手術を受けることに同意させられた。

 あるいは、施設入所の条件として、ある女性障害者とその家族は、福祉事務所から子宮摘出を求められ、それにやむなく同意した。」

 この報告が書かれた時から、既に20年余が過ぎている。被害者たちは高齢化しており、そうでなくとも罪悪感や自罰の念をもって封印してきた被害を語り始めるためには、よほどのサポートが必要だ。

 実態をきちんと解明し、被害者たちを復権し、彼らが共に生きる地域をひらく語り部として、案内役として、残された生を全うできるよう、自治体は率先して動きだしてほしい。
 

BIGLOBEニュースロゴ

ニュースをもっと見る

最近の画像付き記事