3月1日 石巻市雄勝  ”海のまち”雄勝に巨大防潮堤〜行政側 「反対」の声封じる


石巻市雄勝伊勢畑(いせはた)地区。震災前には雄勝総合支所があった。現在、仮設の商店街が営業を続けている。
石巻市は海岸に9,7メートルの防潮堤を建設し、およそ1、7ヘクタールの後背地は8,9メートルかさ上げして商業地とする。さらに奥の内陸部の海抜20メートル以上の場所に移転用地を造成して住宅用地にする他、総合支所や、郵便局、消防署などを建設する計画だ。伊勢畑地区が将来の中心市街地となる予定だ。

石巻市はこの伊勢畑を含む雄勝中心部の復興プランの説明会を開き、住民たちおよそ40人が参加した。雄勝湾の奥に位置する中心部について宮城県と石巻市は、海岸の9,7メートルの防潮堤を建設する。さらに市街地を流れる大原川も両岸に最大で9,7メートルの河川堤防を建設する計画だ。
説明会では防潮堤の是非に議論が集まった。

写真下、雄勝湾沿いの防潮堤の計画高を示すやぐら。「9,7メートルの防潮堤ができると対岸だけでなく、海も山も見えなくなる」住民はこう訴える。

「雄勝に住む私たちは海とともに生きてきた。また、雄勝の魅力はなんといっても海だ。ところが10メートル近いコンクリートの壁は住民と海を隔絶してしまう」住民の一人はこう発言して、計画見直しを求めた。
一方では「震災からすでに4年も経った。早く事業をすすめるべきだ」と計画の早期実現を促す声もあった。

これに対して石巻市は「防潮堤の高さを引き下げると、住んでいる住民の生命や幹線道路を守れなくなる。結果的には海と隔絶することになるが、被災地すべてが同じような事情にある」こう述べ、防潮堤の高さを引き下げることはできないとの姿勢を強調した。

さらに説明の中で、防潮堤の高さを変更するのには次の4つの条件が必要だと明らかにした。
○居住地(現在および将来)がないこと。
○集落間を結ぶ幹線道路が確保されること。
○地元住民の要望(総意)であること。
○その他配慮すべき事項。
4番目の条件については、例えば海岸近くに事業所や工場がある場合は、所有者の承諾が必要。こう説明した。
説明会に同席した宮城県の担当者も同じ見解であることを明らかにした。

宮城県の村井嘉浩知事はこれまで「防潮堤の高さは一切変更しない」と強硬発言を繰り返してきた。これに比べると方針を微修正したと受け取ってよさそうだ。住民の意思を無視して防潮堤計画をすすめることを戒める声が、中央政界でも出てきたことを受けてのことだろうか。

石巻市の説明では、雄勝地区でこの4条件を満たすのは名振、船越、荒、波板の、半島部の4地区だ。住民との話し合いで、このうち船越は2,4メートル、波板は5,7メートルと震災前の防潮堤の高さに引き下げる方向で調整しているという。
これに対して、雄勝中心部は災害危険区域に自宅を修復して住んでいる住民がいる。また幹線道路である国道398号線が海岸沿いを走っており、4条件を満たさない。石巻市の担当者はこう説明した。

大原川、この両岸にも最大で9,7メートルの河川堤防がつくられる。
住民の意向調査では雄勝の中心部に戻って来る住民は、昨年末時点で78世帯、170人。2年前の調査から20人余少なくなった。震災前の住民数に比べれば10パーセントにとどまる。
仮設住宅の用地が足りず、被災した住民の多くが雄勝以外の地区の仮設団地に住まざるをえなかったことに加え、復興事業の遅れが人口流失に拍車をかけた。
将来の中心市街地とされる伊勢畑地区。防潮堤や道路の完成は早くて3年後、住宅用地の造成が終わるのはさらに1〜2年後になる。移転用地に家を建てられるのは震災から7〜8年後ということになる。

説明会では事業の遅れを心配する声が相次いだ。また、まちづくりの青写真をつくるため、実際に中心部に戻って住むという住民をメンバーにした話し合いの機会をつくろうという提案があり、行政側も受け入れる姿勢を明らかにした。
一部の住民たちは「持続可能な雄勝をつくる住民の会」をつくり、自然や景観を生かした雄勝地域の再生に向けて話し合いを始めている。メンバーはいずれも戻ってきて住むという方々だ。
説明会に参加した事務局長の徳水博志さん(61)はこう話した。
『防潮堤の高さを引き下げるには高いハードルがある。景観との調和を図るため防潮堤の形状や位置などについて工夫ができないか。戻る住民は確かに少ないが、魅力あるまちづくりができれば将来若い世代がかえってくる可能性がでてくる。行政と手を組めるところは協力し合いながら、住民にとって住みよい雄勝を目指したい』
住みよい地域の再生に向け人々の模索は続く。行政側も住民の想いを、正面から受け止めることが求められている。(了)

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